太陽の力で料理する ― ソーラークッカーの歴史と可能性

PhotoAC(https://www.photo-ac.com/)/撮影:pasta
ソーラークッカーとは、太陽の光を利用して食材を加熱・調理する器具のことです。電気やガス、薪などの燃料を使わず、太陽光だけで調理ができることから、環境にやさしい調理方法として近年あらためて注目されています。
その仕組みは意外とシンプルです。反射板で太陽光を集め、鍋や容器に当てることで内部の温度を上昇させます。多くのタイプでは、内部を黒く塗装したり、透明なフタで温室効果を利用したりすることで効率よく熱を閉じ込めます。晴天時には100℃以上に達するものもあり、ご飯を炊いたり、煮込み料理を作ったりすることも可能です。
ソーラークッカーの歴史は18世紀にさかのぼります。1767年、スイスの科学者オラス=ベネディクト・ド・ソシュールが、ガラス箱を用いた太陽熱集熱装置を開発しました。これがソーラークッカーの原型とされています。彼は太陽光の温室効果に注目し、箱の内部温度を100℃以上に上昇させることに成功しました。
19世紀に入ると、太陽熱の利用研究はさらに進みます。1870年代には、フランスの技術者オーギュスタン・ムショーが放物面鏡を用いた太陽熱調理装置を開発しました。彼は太陽エネルギーが将来重要なエネルギー源になると予測し、実演を通じてその可能性を示しました。
20世紀になると、特に燃料不足が問題となる地域や、電力インフラが整っていない地域でソーラークッカーの実用化が進みます。アフリカやインドなどでは、薪の過剰利用による森林破壊や、煙による健康被害が社会問題となっていました。ソーラークッカーは、こうした課題を軽減する手段として国際的な支援活動にも取り入れられてきました。
さらに近年では、防災の観点からも注目されています。災害時にはガスや電気が使えなくなることがありますが、晴天であれば太陽光は誰にでも平等に降り注ぎます。簡易型のソーラークッカーは段ボールやアルミホイルでも作ることができ、非常時の調理手段として有効です。
現在では、箱型、パラボラ型(放物面型)、パネル型などさまざまな種類があり、用途や目的に応じて選ぶことができます。アウトドアや環境教育の教材として活用されることも増えています。
ソーラークッカーは、最先端のハイテク機器というよりも、自然のエネルギーを素直に活かす知恵の結晶といえるでしょう。持続可能な社会が求められる今、太陽の力で調理をするという選択肢は、決して特別なものではありません。むしろ、私たちの暮らしを見直すヒントを与えてくれる存在なのです。
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